失業保険だけで住宅ローンをやりくりしてもすぐに行き詰まる理由
雇用保険の失業給付で住宅ローンをやりくりしていたが、すぐに行き詰まったというケースが多いのはなぜなのでしょうか?
会社都合で退職したり、会社が倒産して失業してしまった際に、しばらく失業保険がもらえるから大丈夫だろう…と安心していたのですが、すぐに住宅ローンの返済が厳しくなってしまったというご相談が増えています。
しかも、失業保険をもらえる期間が過ぎてから、住宅ローンの返済に行き詰るのではなく、失業保険をもらっている期間中から厳しくなっているケースが多いのです。
今回は、失業保険で住宅ローンをやりくりしていたが、すぐに返済に行き詰ってしまったというご相談者様のお話です。
この記事を読んでわかること
監修・このブログを書いた人
細貝 和弘(ほそがい かずひろ)
宅地建物取引士
公認不動産コンサルティングマスター
2級フィナンシャルプランニング技能士
賃貸不動産経営管理士
相続診断士
大手不動産仲介会社の法人営業部の責任者として任意売却部門を立ち上げ。銀行や信用保証会社、債権回収会社および破産管財人弁護士のサポート、そして住宅ローンの返済に困窮した方々のお悩み300件以上をコンサルティングしてきた、いわば任意売却の専門家。
失業給付で返済できると楽観は禁物
ご相談者様は、奥様と子供2人の4人家族で住宅ローンの支払いが月額12万円のボーナス払いなしの均等払いでした。奥様はパート勤務で月収が5~7万円でした。
そして、会社の業績不振からのリストラで会社都合での退職することとなりました。
このときにご相談者様は、会社都合での退職なので失業保険がすぐにもらえるのでなんとかなるだろうと楽観的に考えていたとのことです。
退職前のご相談者様の月給は30万円、年収は約400万円、会社の勤続期間は約7年でした。
失業保険の支給額は、日額約6000円を180日間とのことでした。
日額約6000円というと月額で約18万円です。ここから住宅ローンの返済分12万円を払うと残りが6万円になってしまいます。
食費や光熱費などの生活費や車の維持費、子供の習い事や教育費などの出費とマンションの管理費や修繕積立金を払うと、奥様のパート収入を足してもかなり足りないなということがこの時になってわかったといいます。
そして、ご相談者様は失業保険をもらってのんびりすることをあきらめて慌てて就職活動を行いました。
失業中も税金と国民健康保険等の納付は必要
しかし、なかなかご相談者様が望む希望にあった就職先が見つからずに困っていたところに、さらに追い打ちがかかるのです。
税金と国民健康保険と国民年金の納付書が届いたのです。
会社員のときは、社会保険料として健康保険料も年金も給料から天引きされていたため、あまり意識することはありません。まあ、けっこう引かれてるなと文句を言うくらいでしょう。
しかし、会社員でなくなると、失業保険を受けているあいだも、国民健康保険と国民年金は納付しなければいけません。
しかも、会社員をやめた年は残りの期間の分が一括で請求されてきます。
そして、所得税や住民税も毎月給与から天引きされていた分がまとめて請求されてくるのです。
ご相談者様は年収が400万円あったので国民健康保険と国民年金を合わせて40万円ほどを一括納付の請求が来たとのことでした。
税金に関しても、所得税と住民税をあわせて同じくらいの請求がきました。
その時にすでに毎月の家計も赤字で、住宅ローンを払うのが精いっぱいでしたので、やむなく国民健康保険と国民年金と税金は後回しにして払いませんでした。というよりも払えなかったのです。
この時点で一括請求分の税金と国民健康保険と国民年金、マンションの管理費と修繕積立金、そして固定資産税までも後回しにして滞納してしまいました。
それでもなんとか家族が住む家だけは守ろうと、住宅ローンだけは払い続けていたのです。
返済に充てた失業給付にも期限がある
しかし、失業保険もいつまでももらえるものでもありません。
毎月のお金のやりくりに一生懸命になっているうちに、180日間の失業保険の給付期間はあっという間に終わってしまいました。新しい仕事も決まらないままです。
とうとう、毎月の唯一の収入であった失業保険の18万円までなくなってしまったのです。
もうまったく身動きがとれない!面接に行くにも交通費や写真を撮るお金ももったいないというくらいまで追い込まれてしまっていました。
奥様は子供を連れて実家に避難してしまいました。
そして、なんとか最優先で払い続けていた住宅ローンの返済まで滞納してしまい、銀行からの督促の電話も入りはじめて追い込まれていきました。
もうどう頑張ってもにっちもさっちもいかなくなったとのことで、私たちにご相談されてこられたのです。
退職する方に破綻は起こり得る
いかがでしょうか?
今回のケースは、会社を退職するサラリーマンであれば誰にでも起こりうることです。
退職が自己都合の場合でこうなってしまったのであれば、準備不足と考えることもできますが、会社都合の退職の場合はそもそも考える時間的余裕がないのです。
元をたどれば、失業保険の月額18万円の収入になったところから、すでに行き詰りつつあったといえるでしょう。
失業保険をフルにもらうのもいいのですが、それよりもいかにして次の収入を確保できるかが大切なポイントになってくると思います。
結果的に今回のご相談者様は、弊社に任意売却をお任せ頂いて、家は売却して賃貸に引っ越すことになりましたが、その他の税金や社会保険料などの滞納分はきれいに任意売却で清算することができました。
今では次の就職先も決まり、家族とも一緒に新しい生活を再スタートすることができています。
新型コロナウイルスの影響で、会社都合で、退職を余儀なくされて収入が減ったもしくは減りそうだという人もいらっしゃるかもしれません。