住宅ローンの保証人になった。主債務者が払えなくなったら何が起きるか
任意売却 / 滞納 / 連帯債務・連帯保証人
「子どもが家を買う時に保証人になったが、子どもがローンを払えなくなったと連絡が来た」
「兄の住宅ローンの保証人になっていた。ある日突然、銀行から一括返済を求める書類が届いた」
「数年前に頼まれて保証人のハンコを押したが、それっきりになっていた。今ごろ請求が来るとは」
住宅ローンの保証人になることは、実印を押すだけで完了します。しかし主債務者が払えなくなった瞬間、保証人には主債務者と同じ返済義務が生じます。年金生活の親・別の生活を送っている兄弟・かつての知人が、突然数千万円の一括返済を求められる——これは珍しいことではありません。
この記事では、任意売却専門23年のエイミックスが、保証人に何がいつ起きるかの時系列・保証人が取れる対処法・任意売却への関わり方を、実務の観点から解説します。
📋 この記事でわかること
1. 住宅ローンの保証人とは何か
住宅ローンの「保証人」は、主に2つの種類があります。混同されやすいですが、責任の範囲が異なります。
連帯保証人と連帯債務者の違い
| 種類 | 内容 | 主債務者が払えなくなった場合 |
|---|---|---|
| 連帯保証人 | 主債務者の返済が問題なく続いている間は請求されない。主債務者が払えなくなった場合に、主債務者と同等の責任を負う | 金融機関から全額の一括返済を求められる可能性がある。「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」がなく、主債務者より先に請求されることもある |
| 連帯債務者 | 最初から主債務者と同等の返済義務を共同で負う。ペアローンや収入合算ローンで多い形態 | 最初から全額の返済義務を負っており、主債務者の滞納とほぼ同時に請求が来る |
近年は多くの金融機関が保証会社を使うローン(保証人不要型)を取り扱っていますが、フラット35・一部の地方銀行・信用金庫のローンでは今でも人的保証(親族等が連帯保証人になる)が求められることがあります。「印鑑証明と実印だけで簡単になれる」保証人ですが、その法的拘束力は極めて強く、離婚・別居・死亡・年月の経過によっても解除されません。
2. 主債務者が払えなくなったとき、保証人に何が起きるか
主債務者(住宅ローンの本人)が滞納を始めると、保証人への影響は段階的に発生します。
最初は主債務者への督促。でも保証人には「知らせ義務」がない
住宅ローンの滞納が始まると、金融機関はまず主債務者に電話・ハガキで督促します。この段階では保証人への直接連絡はないことが多く、保証人は「主債務者が払えなくなっていること」を知らないまま時間が過ぎるケースがあります。2020年の民法改正により、主債務者から依頼を受けて保証人になった方(受託保証人)は、金融機関に対して主債務の履行状況の情報提供を求める権利が明文化されました(民法458条の2)。ただし自動的に通知が届くわけではないため、不安な場合は金融機関に直接確認することをオススメします。
期限の利益喪失後、保証人に直接請求が来る
主債務者の滞納が3〜6か月続くと「期限の利益の喪失」が発生し、残債全額の一括返済が求められます。この通知は主債務者だけでなく、連帯保証人にも届きます。数千万円規模の一括返済を求める書類が、自分の自宅に突然届くのがこのタイミングです。
⚠️ 保証人が直面する最大の誤解:「自分には関係ない」
「主債務者が払えばいいだけで、自分が実際に払うことはないだろう」と思っている保証人の方が多くいます。しかし連帯保証人には「催告の抗弁権(まず主債務者に請求してくれと言える権利)」がなく、金融機関は主債務者と保証人のどちらに先に請求してもよいのです。主債務者より先に保証人に一括請求が届くことも実務上あります。
保証人として請求が届いた。どうすればいいかわからない方へ
主債務者の状況と物件の価値を把握することが最初のステップです。まずご相談ください。
3. 保証人が直面する現実:時系列で整理
主債務者の滞納から保証人への影響タイムライン
| 時期 | 主債務者への出来事 | 保証人への影響 |
|---|---|---|
| 滞納1〜2か月 | 金融機関から電話・ハガキで督促 | 通知なし。知らないまま時間が過ぎる |
| 滞納3〜6か月 | 期限の利益喪失・保証会社による代位弁済 | 保証人にも一括返済請求の通知が届く |
| 競売申立後 | 裁判所から競売開始決定通知 | 競売が進行。落札後に残債がより多く残ると、保証人への取り立てが強まる |
| 競売落札・残債確定後 | 自宅喪失。残債の回収が始まる | 保証人の財産(給与・預金・不動産)への差押えが現実化するリスク |
保証人の財産への差押えリスク
主債務者が一括返済できず、競売でも残債が残る場合、金融機関(または債権回収会社)は保証人に対して残債の支払いを求めます。これに応じない場合、保証人の給与・預金口座・保証人自身が所有する不動産への差押えという法的手段が取られることがあります。保証人になった当時は想定していなかった事態が、数年後に突然現実になるケースが実務上少なくありません。
4. 保証人が取れる選択肢
主債務者の滞納・請求が届いた段階で、保証人が取れる選択肢を整理します。
選択肢①:主債務者に状況確認・任意売却への協力を促す
保証人にとってもっとも現実的な解決策は、主債務者が任意売却を進めることです。任意売却によって物件が売却されれば、残債はできる限り圧縮され、その後の分割返済に切り替わります。競売になるより任意売却の方が残債が少なくなるため、保証人への取り立て額も小さくなります。主債務者が「どうすればいいかわからない」状態であれば、保証人から任意売却専門業者へのつなぎをすることが最善の選択になることがあります。
選択肢②:弁護士に相談する
請求通知が届いた場合、弁護士に相談することで、保証人としての法的な立場・対応の選択肢・交渉の余地を整理してもらえます。一括返済が不可能な場合の分割返済の交渉・債務整理の可否なども含めて相談することをオススメします。エイミックスでは必要に応じて弁護士のご紹介も可能です。
選択肢③:保証人自身の債務整理を検討する
保証人が支払い義務を負った残債が多額で、自らの生活・財産への影響が深刻な場合、個人再生・自己破産という債務整理の選択肢があります。ただしこれらは保証人自身の生活にも大きな影響を与えるため、弁護士への相談の上で慎重に判断することが必要です。
保証人を「外れる」ことはほぼできない
保証人になった後に「外れたい」と思っても、金融機関の承諾なしに保証人契約を解除することはできません。代わりの保証人を立てるか・主債務者の信用力が向上して保証不要になるか・住宅ローンを完済するか・物件を売却してローンを精算するか——いずれかしか方法はありません。
5. 任意売却と保証人の関係
主債務者が任意売却を進める場合、保証人はどう関わるのかを整理します。
任意売却には保証人の同意・署名が必要になることがある
住宅ローンを任意売却する際、金融機関への申出書類に保証人の署名・捺印が必要になるケースがあります。主債務者が任意売却を進めようとしても、保証人が協力しない・連絡が取れない場合、手続きが止まることがあります。保証人にとっても任意売却は「自分への請求を最小化するための協力」であるため、署名に応じることは保証人自身の利益にもなります。
任意売却後の残債は保証人にも影響する
任意売却後に残った残債(売却代金で完済できなかった分)については、主債務者と保証人の両方に返済義務が残ります。ただし売却完了後はご本人(債務者・保証人)と債権者が直接協議して返済条件を決めます。生活実態に応じた分割返済額に設定されることが多く、月々1万円程度のケースも実務上あります。競売になった場合より任意売却の方が残債が少なくなる傾向があり、保証人にとっても任意売却の成立を支持することが合理的です。
6. よくある質問(FAQ)
- Q. 子どもの住宅ローンの保証人になっています。子どもが払えなくなったら、私の家も差し押さえられますか?
- 主債務者(子ども)が一括返済できず、競売後も残債が残り、保証人(親)が残債を返済しない場合、理論上は保証人の財産(預金・不動産等)への差押えというリスクがあります。ただしそこに至る前に、主債務者が任意売却を進めることで残債を圧縮し、分割返済に切り替えることが現実的な対処になります。まず子ども(主債務者)の状況と物件の価値を確認することが先決です。
- Q. 保証人になってから10年以上経ちます。今でも保証人としての責任は続きますか?
- はい、住宅ローンが完済されるまで保証人としての責任は続きます。年月の経過・主債務者との関係の変化(離婚・疎遠等)によっても保証人契約は解除されません。住宅ローンの消滅時効は、契約の締結時期や貸主の種別によって異なります(2020年4月以降に成立した債権は原則5年、旧法適用の契約や確定判決がある場合は10年)。ただし主債務者が返済を続けている間は時効は進行しません。ご自身の状況については弁護士にご確認ください。
- Q. 保証人として一括返済請求の通知が届きました。無視するとどうなりますか?
- 無視し続けると、給与・預金口座・保証人自身の不動産への差押えという法的手段が取られるリスクがあります。通知が届いた段階で、弁護士への相談または主債務者の任意売却への協力という形で対処を始めることをお勧めします。放置が最も状況を悪化させます。
- Q. 主債務者が任意売却に同意しません。保証人として何かできることはありますか?
- 任意売却が成立しないまま競売になると、売却価格が低くなるため残債が多く残り、保証人への請求額も大きくなります。「任意売却に協力することが、お互いの損失を最小化する」という事実を主債務者に伝えることが有効です。第三者(任意売却専門業者)が間に入って説明することで、主債務者が動き始めるケースがあります。エイミックスでは、保証人の方からのご相談も受け付けています。
7. まとめ
✅ この記事のポイント
- ● 連帯保証人には「催告の抗弁権」がなく、主債務者より先に一括請求が来ることもある。
- ● 主債務者の滞納情報は保証人に自動的に通知されない。気づかないうちに問題が進行しているリスクがある。
- ● 保証人としての責任は、年月の経過・関係の変化によって消えない。住宅ローンが完済されるまで続く。
- ● 保証人にとって最善の対処は「主債務者に任意売却を進めてもらうこと」。競売より任意売却の方が残債が少なくなり、保証人への影響も小さくなる。
- ● 請求通知を無視し続けると、保証人自身の財産(給与・預金・不動産)への差押えリスクがある。
- ● 保証人の方からのご相談も、エイミックスでは受け付けています。
保証人として請求が届いた。主債務者の状況が不安。まずご相談ください
保証人の方からのご相談も受け付けています。23年の専門実績で、状況に応じた対処法をご提案します。

この記事の監修・相談回答
細貝 和弘(ほそがい かずひろ)
宅地建物取引士 / 公認不動産コンサルティングマスター / 2級FP技能士 / 相続診断士
「子どもの家のハンコを押しただけなのに、突然銀行から書類が届いた」という保証人の方からのご相談は実務上少なくありません。保証人の立場からできること・主債務者に任意売却を進めてもらうことの重要性・弁護士との連携が必要な場面の判断を含め、保証人の方の相談にも対応しています。「どこに相談すればいいかわからない」という段階からご連絡ください。




























