抵当権の仕組みと任意売却の関係。オーバーローンでも売れる理由を専門家が解説
任意売却 / 滞納 / 競売
「住宅ローンが残っているのに、家を売ることはできるのだろうか」
「抵当権が付いたまま売却できるのか」
任意売却を検討するとき、こうした疑問を持つ方は少なくありません。
結論から言えば、抵当権が設定されていても、債権者(金融機関)の同意を得た「任意売却」という方法で家を売ることは可能です。ただし、抵当権の仕組みを正しく理解していなければ、手続きの意味や注意点が見えてきません。
この記事では、抵当権とは何か・なぜローンが残っていても売れるのか・任意売却でどう抵当権が外れるのかを、任意売却専門22年のエイミックスが実務の観点からわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
1. 抵当権とは何か──住宅ローンとセットで設定される担保権
抵当権(ていとうけん)とは、住宅ローンなどの借入金の担保として、不動産(土地・建物)に設定される権利です。金融機関が「もし返済が滞ったときは、この不動産を競売にかけて回収する」という権利を法律上確保する仕組みです。
📐 抵当権の基本構造
- 住宅ローンを借りると自動的に設定される
- 住宅ローンを組む際、金融機関は購入する不動産に抵当権を設定することを融資の条件とします。これにより、登記簿(登記事項証明書)に「抵当権者:〇〇銀行」と記載されます。
抵当権設定の当事者:
・抵当権者(債権者):金融機関(銀行・信用金庫など)
・抵当権設定者(債務者):住宅ローンを借りた人(=家の所有者)ローンを完済すれば、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が交付され、所有者(または依頼した司法書士)が法務局で抹消登記の申請を行います。完済前は、抵当権が登記に残り続けます。
抵当権と「根抵当権」の違い
| 抵当権 | 根抵当権 | |
|---|---|---|
| 主な用途 | 住宅ローンなど、特定の借入金の担保 | 事業融資など、継続的な取引の担保 |
| 対象となる債権 | 特定の債権(住宅ローン) | 一定の範囲内の不特定の債権 |
| 任意売却での扱い | 売却代金から残債を精算し、抹消 | 元本確定後に同様の手続き。事業者の方に多いケース |
住宅ローンに設定されているのは通常「抵当権」です。事業用融資などで「根抵当権」が設定されているケースもあり、その場合は手続きが異なる部分がありますので、専門家への相談が特に重要です。
2. 抵当権が付いたままでは売れない理由
「抵当権が設定されている不動産は、そのままでは売れない」──これは不動産取引の大原則です。なぜでしょうか。
買主の立場に立って考えると、理解しやすくなります。仮に抵当権が残ったまま家を購入したとすると、その後、前の所有者(売主)がローンを返済できなくなった場合、金融機関が「抵当権」を行使して、新しい買主が住んでいる家でも競売にかけてしまうことができます。つまり、新しく買主になった人が突然「家を出て行け」と言われる事態が起こりえます。
⚠️ 抵当権が残ったまま売れない理由(まとめ)
- 買主が安心して取引できない
- 抵当権が残ったままでは、買主は「いつ競売にかけられるかわからない家」を購入することになり、通常の不動産市場では取引が成立しません。
そのため、不動産売却の際は「抵当権を抹消した状態で引き渡す」ことが条件となります。 - ローン完済が前提
- 通常の不動産売却では、「売却代金でローンを完済 → 抵当権が抹消 → 買主に引き渡し」という流れが同日に行われます。ローンを完済できない場合(オーバーローン)は、この流れが成り立ちません。
3. なぜ任意売却なら売れるのか──抵当権抹消の仕組み
住宅ローンの残債が売却価格を上回る「オーバーローン」の状態では、売却代金だけではローンを完済できないため、通常の売却では抵当権が抹消できません。
任意売却とは、この問題を解決するために、金融機関(抵当権者)の同意を得た上で、ローンが残ったまま不動産を売却する方法です。
なぜ金融機関は同意するのか
金融機関も、できれば競売よりも任意売却を望んでいます。理由は以下のとおりです。
| 任意売却 | 競売 | |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格に近い額 (7〜9割程度) | 市場価格より低くなりやすい (5〜7割程度) |
| 回収できる金額 | 多い | 少ない |
| 手続き費用 | かからない(売主側で負担) | 裁判所費用が発生 |
| 時間 | 概ね3〜6ヶ月 | 1〜2年以上かかることも |
つまり、金融機関にとっても「競売より任意売却の方が多く回収できる」という合理的な理由があるため、条件が整えば同意してくれます。この金融機関の同意(=抵当権を外すことへの合意)こそが、任意売却を成立させるための最大のポイントです。
💡 「同意」を得るために必要なこと
- 金融機関との交渉が成否を左右する
- 金融機関が任意売却に同意するには、売却価格の調整や、残債の取り扱いについて金融機関との協議が必要です。ただし、残債の免除・減額・猶予などの債務交渉は弁護士の業務領域であり、不動産会社が行うことはできません。任意売却では、不動産売却に関する手続きは専門の不動産会社が、債務に関する法律的な交渉は弁護士や司法書士が担当します。状況に応じて適切な専門家と連携して進めることが重要です。
4. 抵当権が複数ある場合(第1・第2抵当権)はどうなるか
住宅ローンを複数の金融機関から借りている場合や、リフォームローンなどで追加融資を受けている場合、複数の抵当権が設定されていることがあります。
第1抵当権・第2抵当権とは
抵当権には「順位」があります。登記が先に行われた抵当権が「第1順位」、後に設定されたものが「第2順位」となります。競売や任意売却で売却代金が分配される際、順位が上の抵当権者から優先的に回収できます。
【具体例】複数の抵当権がある場合の分配イメージ
- 第1抵当権者:A銀行(住宅ローン残債 2,000万円)
- 第2抵当権者:B信用金庫(リフォームローン残債 200万円)
- 任意売却価格:1,600万円
代金の分配(優先順位順):
A銀行(第1順位)→ 最大1,600万円まで回収(残債2,000万円のうち1,600万円回収・400万円不足)
B信用金庫(第2順位)→ A銀行が優先されるため、回収ゼロになる可能性がある
※ 実際の分配は交渉によって異なります。第2抵当権者への「ハンコ代(同意料)」として一定額を割り当てることで同意を得るケースもあります。
任意売却には全抵当権者の同意が必要
任意売却を成立させるには、すべての抵当権者の同意が必要です。第2抵当権者がほぼ回収できない場合でも、同意なしには抵当権を抹消できません。そのため、「ハンコ代」と呼ばれる少額の同意料を第2抵当権者に支払い、同意を得るという交渉が行われることがあります。
⚠️ 第2抵当権者が同意しない場合は?
- 任意売却が難航する可能性がある
- 第2抵当権者が同意を拒む場合、任意売却が成立しないリスクがあります。この場合、最終的には競売に移行することになりかねません。こうした複雑な交渉を抱えるケースほど、早期に専門業者に相談することが重要です。交渉の余地がある段階で動くことが解決への近道です。
5. オーバーローンでも抵当権が外れる理由
「ローンが残っているのに、どうして抵当権が外れるのか」──これが多くの方が最も不思議に感じる点です。
通常、抵当権は「債務(ローン)を完済したときに消滅する(付従性)」という性質を持ちます。しかし、任意売却では完済できないにもかかわらず抵当権が外れます。なぜでしょうか。
💡 抵当権抹消の仕組み
- 「完済」ではなく「金融機関の合意」によって抹消される
- 民法上、抵当権者(金融機関)は抵当権を自らの意思で放棄・抹消することができます。オーバーローンの状態で任意売却が行われる場合、金融機関は「全額回収はできないが、競売より多く回収できる」という判断のもと、残債が残ったまま抵当権の抹消に同意します。
つまり、「完済 → 抵当権抹消」ではなく、「金融機関の合意 → 抵当権抹消 → 残債は売却後も債務として残る」という流れになります。
| 通常売却 | 任意売却(オーバーローン) | |
|---|---|---|
| ローン残債 | 売却代金で完済 | 完済できず残債が残る |
| 抵当権の抹消 | 完済と同時に自動的に抹消 | 金融機関の合意によって抹消 |
| 売却後の残債 | なし | 残る(返済条件を協議) |
| 家の引き渡し | 抵当権抹消後に引き渡し | 抵当権抹消後に引き渡し(同じ) |
任意売却後に残った残債は、消えるわけではありません。ただし、金融機関との交渉次第で月々少額の分割払いにしてもらえることが多く、生活再建と並行して無理のない形での返済が可能になります。
6. 任意売却における抵当権抹消の流れ
実際に任意売却で抵当権が抹消されるまでの流れを確認しておきましょう。専門業者が代行しますが、全体の流れを把握しておくと安心です。
専門業者への相談・依頼
任意売却の専門業者に相談し、状況を整理します。ローン残債・不動産の評価額・抵当権の数・滞納状況などを確認し、任意売却が可能かどうかを判断します。
金融機関(抵当権者)への任意売却の申し出
専門業者が、金融機関に対して「競売ではなく任意売却で進めたい」と申し出ます。金融機関側の担当部門(サービサーや債権管理部など)と交渉を開始します。
売却価格・配分の合意
不動産の査定価格をもとに、「いくらで売れば抵当権を外してもらえるか」という配分条件を金融機関と合意します。複数の抵当権がある場合は、各権利者との個別交渉も必要です。
買主の募集・売買契約の締結
金融機関の同意価格の範囲内で買主を募集し、売買契約を締結します。買主には「住宅ローン残債がある物件」であることを説明した上で取引を進めます。
決済・抵当権抹消登記・引き渡し
売買代金の決済と同時に、司法書士が立ち会って抵当権抹消登記を行います。抹消登記が完了してから、買主への引き渡しが行われます。この一連の手続きが同日に行われるのが一般的です。
残債の取り扱いについて専門家へ相談
売却後に残った残債の取り扱い(返済条件の協議・債務整理など)は、弁護士または司法書士の業務領域です。不動産会社が残債交渉を行うことは弁護士法上できませんが、エイミックスでは状況に応じて信頼できる弁護士・司法書士をご紹介します。個人再生や自己破産などの法的整理が必要な場合も、適切な専門家へのつなぎをサポートします。
7. 競売になると抵当権はどうなるか──任意売却との違い
任意売却の期間内に売却が成立しなかった場合、または金融機関が競売の申し立てを行った場合、裁判所の手続きによる競売が進行します。競売でも抵当権は最終的に抹消されますが、その過程と結果が任意売却とは大きく異なります。
| 比較項目 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 抵当権の抹消方法 | 金融機関の同意による抹消 | 裁判所の手続きによる強制抹消 |
| 売却価格 | 市場価格に近い | 市場価格より低くなりやすい |
| 引っ越し費用 | 売却代金の配分交渉の中で一定額を確保できる場合がある | 原則として出ない |
| 周囲への公示 | なし(プライバシーが守られる) | 裁判所の公示・現地調査あり |
| 残債への影響 | 残債の取り扱いについて弁護士等と連携しながら対応可能 | 売却価格が低くなるため残債が多く残りやすく、その後の対応が困難になりやすい |
競売になると、抵当権は最終的に抹消されますが、売却価格が低いため残債が多く残り、その後の生活再建が一層困難になりがちです。また、落札者(第三者)への引き渡しを強制されるため、引っ越し時期や行き先を自分でコントロールできなくなります。
⚠️ 競売開札前でも任意売却に切り替えられることがある
- 「競売の通知が来た」という段階でも諦めないでください
- 競売の申し立てがあった後でも、開札日(入札の結果が決まる日)の前日までであれば、任意売却に切り替えられる場合があります。時間は限られていますが、すぐに専門業者に相談することで解決できるケースは少なくありません。エイミックスでは緊急案件にも対応していますので、まずはご連絡ください。
8. よくある質問(FAQ)
- Q. 抵当権が付いたままでも、家に住み続けることはできますか?
- 抵当権が設定されているだけでは、住み続けることに問題はありません。住宅ローンの返済を続けている間は、抵当権が行使されることはなく、通常通り居住できます。問題が生じるのは、返済が滞り始め、最終的に金融機関が競売を申し立てた場合です。
- Q. 抵当権の抹消登記にかかる費用は誰が負担しますか?
- 通常の売却では売主が負担しますが、任意売却の場合は売却代金の配分の中から賄われることが一般的です。抹消登記の費用(登録免許税+司法書士報酬)は物件にもよりますが、数万円程度が目安です。エイミックスでは、費用の内訳も含めて事前に丁寧にご説明します。
- Q. 任意売却後、抵当権が本当に抹消されているか確認できますか?
- はい。抵当権の抹消は法務局での登記手続きによって行われます。手続き完了後は、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することで抹消されていることを確認できます。法務局の窓口またはオンライン(登記情報提供サービス)で誰でも取得可能です。司法書士が確認した上で引き渡しが行われますので、ご安心ください。
- Q. 連帯保証人がいる場合、抵当権の抹消後も保証人の義務は残りますか?
- 任意売却によって不動産に設定された抵当権は抹消されますが、連帯保証人の保証債務は消滅しません。売却後に残った残債については、主債務者(ローンを借りた本人)と連帯保証人の両方に返済義務が残ります。連帯保証人への影響や残債の取り扱いについては法律的な問題が伴うため、弁護士または認定司法書士にご相談ください。エイミックスでは、必要に応じて専門家のご紹介も可能です。
- Q. 任意売却を断られた場合、抵当権を外す方法はありますか?
- 金融機関が任意売却に同意しない場合、基本的には競売手続きに移行することになります。ただし、任意売却を断られる主な理由は「提示価格が低すぎる」「手続きの進め方に問題がある」といったケースも多く、専門の不動産会社が関与することで状況が改善する場合があります。また、残債の問題については弁護士への相談により、個人再生や自己破産といった法的整理という選択肢が生じることもあります(債務整理は弁護士・認定司法書士の業務です)。不動産売却と債務対応はそれぞれ別の専門家が担うため、まずは状況をご相談ください。
9. まとめ:抵当権を正しく理解して任意売却を進めるために
抵当権と任意売却の関係をまとめると、以下のとおりです。
- ☑ 抵当権は住宅ローンの担保として不動産に設定される権利で、完済前は登記に残る
- ☑ 抵当権が残ったままでは通常売却できないが、金融機関の同意があれば任意売却が可能
- ☑ オーバーローンでも、金融機関の合意により抵当権を抹消し売却することができる
- ☑ 抵当権が複数ある場合は、すべての権利者の同意が必要。交渉の難易度が上がる
- ☑ 任意売却後の残債は消えないが、残債の取り扱いは弁護士等の専門家と連携して対応できる
- ⚠ 競売になると抵当権は強制的に抹消されるが、売却価格が低く残債が増え生活再建が困難になりやすい
- ⚠ 競売通知が届いた後でも開札前であれば任意売却に切り替えられる場合がある。すぐに専門家へ相談を
「抵当権が複数ある」「金融機関からすでに通知が届いている」「競売の申し立てがあった」など、状況が深刻になっている場合でも、早期に専門業者に相談することで解決できるケースが多くあります。
エイミックスは任意売却専門22年の実績で、抵当権に関する調整・売却・引き渡しを一貫してサポートします。残債の取り扱いなど法律的な問題については弁護士・司法書士と連携し、トータルでサポートします。まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修・相談回答
細貝 和弘(ほそがい かずひろ)
宅地建物取引士 / 公認不動産コンサルティングマスター / 2級FP技能士
「抵当権が付いているから売れない」と思い込んでいる方が非常に多いです。しかし任意売却では、金融機関と丁寧に交渉を重ねることで、オーバーローンの状態でも抵当権を抹消し、売却を成立させることができます。「もう手遅れ」と思わずに、まず状況を話してください。




























