共働きで住宅ローンを組んだが、片方が払えなくなった。2馬力ローンの落とし穴と対処法
任意売却 / 収入減少 / 失業 / 滞納 / 連帯債務・連帯保証人 / 離婚
「共働きで余裕を持って組んだはずのローンなのに、妻が育休に入った途端に払えなくなった」
「夫がリストラされ、私の収入だけでは2人分のローンが払えない」
「2馬力で組んでいたが、離婚することになった。どちらが払うのか決まらない」
共働き世帯の住宅購入が増える中、夫婦2人の収入を前提に組んだ住宅ローン(いわゆる「2馬力ローン」)が、片方の収入が途絶えた瞬間に一気に苦しくなるケースが実務上増えています。2人で払えば余裕があるように見えたローンも、1人の収入だけでは成り立たない水準に設定されていることが多いからです。
この記事では、任意売却専門22年のエイミックスが、2馬力ローンが破綻しやすいパターン・ローンの種類別のリスクの違い・片方が払えなくなったときの状況別の対処法を、実務の観点から解説します。
1. 2馬力ローンが破綻しやすい4つの典型パターン
2馬力ローンの問題は「2人で払えば大丈夫」という前提が崩れたときに一気に表面化します。実務上よく見られる4つのパターンを整理します。
パターン①:育休・産休による収入半減
育休中は育児休業給付金(給与の約67%)が支給されますが、手取りとしては大きく減少します。さらに育休明けに時短勤務に移行すると収入はさらに下がります。「育休中も払えるはずだった」という計算が崩れ、滞納が始まるケースがあります。育休は一時的な収入減ですが、その「一時的」な期間に滞納が積み重なると、信用情報や競売のリスクに発展します。
パターン②:リストラ・転職による収入急落
片方がリストラや会社都合退職になった場合、もう片方の収入だけでローンを維持しなければなりません。2馬力で組んだローンは1人の収入で払える水準に設定されていないことが多く、失業給付が終わるまでの数か月で滞納が始まります。転職活動が長引くほど、滞納月数が積み重なります。
パターン③:病気・けがによる長期休職
傷病手当金は給与の約3分の2が支給されますが、支給期間は最長1年6か月です。2馬力前提のローンでは、この給付でも返済が追いつかないケースがあります。復職できるかどうかの見通しが立たない中で、住宅ローンの問題だけが重くのしかかります。
パターン④:離婚による2馬力の解消
離婚すると2馬力の前提が崩れ、どちらか一方が全額を負担するか、売却して清算するかという判断が迫られます。どちらかが住み続けることを望む場合でも、ローン名義の問題・財産分与・残債の扱いが絡み合い、問題が複雑になります。離婚×ペアローンについてはこちらの記事も参照してください。
2. ローンの種類別:リスクの違いを整理する
共働きで住宅ローンを組む場合、主に3つの形態があります。それぞれ片方の収入が途絶えたときのリスクが異なります。
2馬力ローンの種類別リスク比較
| 種類 | 仕組み | 片方が払えなくなった場合のリスク |
|---|---|---|
| ペアローン | 夫婦それぞれが別々のローン契約を結ぶ。互いが連帯保証人になるケースが多い | 片方が払えなくなっても、もう片方のローン契約は別に存在する。連帯保証人として相手の債務も負う可能性がある。離婚時に特に複雑になる |
| 収入合算 (連帯債務) | 1本のローン契約で2人の収入を合算して審査。2人とも主債務者として返済義務を負う | 片方の収入が減っても、もう片方が全額負担する義務がある。2人の収入合計で審査が通っているため、1人では返済が難しい水準になりやすい |
| 単独ローン+パート収入 | ローン名義は一方のみ。審査も単独収入で通過しているが、実態は2人の収入で返済している | 法的にはローン名義人のみが返済義務を負う。ただし実態として2人の収入で払っていた場合、片方の収入が途絶えると家計が破綻するリスクがある |
⚠️ 2馬力ローン最大の落とし穴:「借りられる額」と「1人で払える額」の差
金融機関の審査は2人の合算収入で行われるため、単独収入より大きな金額を借りられます。しかしこの「借りられる額」は、2人が働き続けることを前提にした上限額です。片方の収入が途絶えた瞬間、「1人では到底払えない」水準のローンだけが残ります。2馬力前提のローンは、単独ローンより破綻リスクが高いという認識が必要です。
「片方の収入が途絶えて払えなくなった」という状況でもご相談できます
ローンの種類・名義・残債の状況を整理した上で、あなたの状況に合った選択肢をご提案します。
3. 片方の収入が途絶えたときの状況別対処法
片方が払えなくなったとき、取れる手段は現在の状況によって変わります。
収入途絶えが一時的で、回復の見通しがある(育休・短期の転職活動など)
収入が回復するまでの期間が明確であれば、金融機関へのリスケ(返済条件の変更)を相談することで、返済額を一時的に減らしてもらえる場合があります。滞納が始まる前に相談することで、より柔軟な条件を引き出せる可能性があります。収入回復後に通常返済に戻るプランを具体的に示すことが重要です。
収入回復の見通しが立たない(長期病気・再就職難航・離婚など)
収入が戻る見通しが不明確な場合、リスケで時間を稼ぎながら売却の準備を並行させることが現実的です。物件の現在の市場価格とローン残債の差(アンダーローンかオーバーローンか)を早期に把握することが、選択肢の判断に直結します。AI査定(ハウマッチ)でまず市場価格を確認してみてください。
すでに滞納が始まっている
滞納月数が増えるほど、遅延損害金が積み重なり、競売のタイムリミットが近づきます。任意売却への切り替えを検討する段階です。2馬力ローンの場合、売却にはローン名義人全員の同意が必要になるため、配偶者との協力関係が鍵になります。
状況別・推奨アクション早見表
| 状況 | 推奨アクション |
|---|---|
| まだ滞納していない。収入回復の見通しあり | 銀行へのリスケ相談。物件の市場価格を把握しておく |
| まだ滞納していない。回復の見通しなし | リスケ+並行して売却準備。アンダーローンなら通常売却が最善 |
| 滞納1〜3か月。督促状が届いた | 任意売却の専門家への相談を開始。時間が選択肢を左右する |
| 離婚が重なり、どちらが払うか未確定 | 家の問題を先に整理。売却の同意を離婚成立前に取り付ける |
4. 任意売却が出口になるケース
2馬力ローンで片方が払えなくなり、以下の状況にあれば任意売却が現実的な出口になります。
- 残債が物件の市場価格を上回っており(オーバーローン)、通常売却では完済できない
- 1人の収入ではローンを払い続けることが収支上不可能で、収入回復の見通しが立たない
- 離婚が重なり、どちらも住宅ローンを払い続ける意思・能力がない
- 滞納が始まっており、競売のリスクが迫っている
2馬力ローンの任意売却で確認すべきポイント
ペアローン・収入合算など2人が名義に関わるローンの場合、任意売却には原則として名義人全員の同意・署名が必要です。離婚協議中で感情的な対立がある場合、同意取得が難航することがあります。また売却後の残債の負担割合も、任意売却の手続き自体とは別に、夫婦間で取り決める必要があります。残債の分割返済額は債権者との協議で生活実態に応じた金額に設定されることが多く、月々1万円程度のケースも実務上あります。
5. よくある質問(FAQ)
- Q. 妻が育休中で収入が減りました。夫の収入だけでは払えません。どうすればいいですか?
- 育休は一時的な収入減であるため、まず金融機関へのリスケ(返済条件の変更)を相談することをお勧めします。育休明けの復職時期・見込み収入を具体的に示すことで、一定期間の返済額減額や据置きに応じてもらえる場合があります。滞納が始まる前に相談することが重要です。
- Q. ペアローンで組んでいます。夫がリストラされた場合、私も返済義務を負いますか?
- ペアローンはそれぞれが独立したローン契約を結んでいますが、互いが連帯保証人になっているケースが多くあります。その場合、夫のローンが払えなくなると、連帯保証人である妻にも返済義務が及ぶ可能性があります。ご自身のローン契約書で連帯保証人の欄を確認してください。
- Q. 収入合算(連帯債務)で組んでいます。片方が払えなくなったら、もう片方が全額払わなければなりませんか?
- 収入合算(連帯債務)では、2人ともローン全額に対して返済義務を負います。片方が払えなくなった場合、金融機関はもう片方に全額の返済を求めることができます。2人の合算収入で審査が通っているため、1人では返済が難しい水準になっているケースが多く、リスケや任意売却の検討が必要になる場合があります。
- Q. 離婚することになりました。ペアローンの家はどうすればいいですか?
- ペアローンの家を離婚時に整理する場合、アンダーローンなら通常売却で清算、オーバーローンなら任意売却が選択肢になります。どちらの場合も、売却には両名の同意・署名が必要です。離婚成立前に売却の同意を取り付けておく方が手続きがスムーズです。詳しくはペアローン×離婚の任意売却をご参照ください。
6. まとめ
✅ この記事のポイント
- ● 2馬力ローンは「2人で払えば大丈夫」ではなく「2人が払い続けなければ成り立たない」設計。
- ● 育休・リストラ・病気・離婚のどれかが起きた瞬間に、単独収入では払えない構造が露わになる。
- ● ペアローンは互いの連帯保証リスク、収入合算は全額負担義務など、ローンの種類によってリスクの性質が異なる。
- ● 一時的な収入減(育休など)はリスケで対応。回復見通しがなければ売却準備を並行して進める。
- ● 離婚が重なる場合は家の問題を先に動かし、離婚成立前に売却同意を取り付けることが重要。
- ● オーバーローンでも任意売却という出口がある。名義人全員の同意が必要なため、早めに専門家に相談を。
2馬力ローンで片方が払えなくなった。まず状況を整理しましょう
ローンの種類・名義・残債・市場価格、これらを把握することが出口への第一歩です。22年の専門実績で一緒に整理します。

この記事の監修・相談回答
細貝 和弘(ほそがい かずひろ)
宅地建物取引士 / 公認不動産コンサルティングマスター / 2級FP技能士
「共働きで余裕を持って組んだはずなのに」というご相談は、2馬力ローン世帯の増加とともに増えています。育休・リストラ・離婚など、きっかけはさまざまですが、片方の収入が途絶えた瞬間に問題が顕在化するという構造は共通しています。ローンの種類・名義・残債の状況を整理するところから、一緒に始めましょう。




























