自営業・個人事業主が住宅ローンを払えなくなったら。サラリーマンと違う3つの落とし穴と対処法
任意売却 / 倒産 / 収入減少 / 滞納
「売上が激減したが、確定申告書の数字が追いついていない。銀行に相談しても動いてもらえない」
「事業の借入れと住宅ローンの両方が重なって、どちらを優先すればいいかわからない」
「自営業だと任意売却できないのでは、と思って相談できずにいる」
こうしたご相談が、自営業・個人事業主の方からエイミックスに多く寄せられています。
住宅ローンの問題は給与所得者だけの話ではありません。むしろ自営業者・フリーランスには、サラリーマンにはない固有の落とし穴があります。
この記事では、任意売却専門22年のエイミックスが、自営業者が住宅ローンを払えなくなる典型的なパターン・サラリーマンと違う3つの落とし穴・状況別の対処法を、実務の観点から解説します。
1. 自営業者が住宅ローンを払えなくなる典型パターン
給与所得者の場合、住宅ローンが払えなくなる引き金は「リストラ・病気・離婚」など比較的わかりやすい出来事です。一方、自営業・個人事業主・フリーランスの場合、問題はより静かに、気づかないうちに進行することが多くあります。
① 売上の急落・得意先の喪失
主要取引先の倒産・撤退、業界全体の縮小、コロナ禍のような外部環境の急変など、売上が一気に落ち込むことがあります。給与所得者のように翌月から収入がゼロになることはなくても、半年・1年かけてじわじわと収入が減少し、気づいたときには住宅ローンを出せる余力がなくなっているケースが多いです。
② 事業融資と住宅ローンの二重苦
自営業者は事業用の借入れを抱えているケースが少なくありません。売上が落ち始めると、事業資金の返済と住宅ローンが同時に重くなり、どちらを優先すべきか判断できないまま両方が滞納になってしまうパターンがあります。
③ 「来月入金があるから」の先送り
自営業特有のリズムとして、請求から入金まで時間がかかる業種では「今月は苦しいが来月の入金で払えばいい」という判断を繰り返しているうちに、気づけば数か月分の滞納になっているケースがあります。1回の滞納は取り戻せますが、繰り返すと信用情報への影響と競売リスクが一気に高まります。
2. サラリーマンと違う「3つの落とし穴」
自営業者が住宅ローンで詰まりやすい理由は、給与所得者とは構造的に異なる3つの問題があるからです。
⚠️ 自営業者特有の3つの落とし穴
落とし穴①:確定申告書と実態収入のタイムラグ
給与所得者の収入証明は直近の源泉徴収票で即座に確認できますが、自営業者・個人事業主の収入証明は確定申告書が主になります。売上が半年前から激減していても、直近の確定申告書には「まだ払えていた時期」の数字が載っています。
この結果、銀行のリスケ(返済条件の変更)交渉で「書類上は払える」と判断されてしまい、適切な支援を受けにくいという矛盾が生じます。実態の苦しさを説明するために、月次の売上実績・通帳の入出金状況など補足資料を準備することが重要です。
落とし穴②:雇用保険(失業給付)がない
給与所得者が失業した場合、雇用保険の給付が一定期間の生活と返済のバッファになります。自営業者・フリーランスにはこの給付がありません。売上が止まった瞬間、収入はゼロに近くなります。問題の進行速度が給与所得者より速いのはこのためです。「まだ大丈夫」と感じている段階で動き始めることが、選択肢を守る唯一の方法です。
落とし穴③:事業融資との優先順位判断の難しさ
住宅ローンと事業融資の両方を抱えている場合、「どちらを先に払うべきか」の判断が難しく、対応が後手に回りがちです。住宅ローンは不動産に抵当権が設定されており、滞納が続けば競売という形で自宅を失うリスクがあります。事業融資の性質(担保の有無・保証人の有無)によって対処法も変わるため、早めに専門家に全体像を整理してもらうことが重要です。
「自営業でも相談できますか?」もちろんです
給与所得者と自営業者では問題の構造が違います。状況を丁寧に聞いた上で、あなたに合った選択肢をご提案します。
3. 状況別の対処法
住宅ローンの問題は、現在の状況によって取れる手段が変わります。自営業者特有の文脈を踏まえて整理します。
まだ滞納していない段階:銀行へのリスケ相談
収入が減り始め、「このままでは払えなくなりそう」と感じた段階で、住宅ローンの貸主である銀行・金融機関へリスケ(返済条件の変更)を相談することが最初の選択肢です。
自営業者の場合、確定申告書だけでなく直近の月次売上・通帳の入出金など実態を示す資料を用意して相談すると、銀行側も状況を把握しやすくなります。銀行への相談が怖いと感じる方は、こちらの記事も参考にしてください。
すでに滞納が始まった段階:任意売却の検討
滞納が数か月に及んでいる、または督促状・期限の利益喪失通知が届いている状況では、任意売却を視野に入れる段階です。任意売却は住宅ローンの残債が自宅の売却価格を上回っているオーバーローンの状態でも、金融機関の合意のもとで自宅を売却できる方法です。
自営業者でも任意売却の手続き自体は給与所得者と変わりません。後述の「任意売却できないは誤解」の項もご参照ください。
事業融資も抱えている場合
住宅ローン単独であれば任意売却で解決の道が開けますが、事業融資も含めた多重債務の場合は、弁護士・司法書士など法律の専門家との連携が必要になるケースがあります。どの債務をどう整理するかは個別の状況によって異なるため、まずは専門家に全体像を整理してもらうことをお勧めします。エイミックスでは必要に応じて弁護士のご紹介も可能です。
状況別・取れる手段の早見表
| 状況 | 主な選択肢 |
|---|---|
| まだ滞納していない | 銀行へのリスケ相談・家計の見直し・早期売却(アンダーローンの場合) |
| 滞納1〜3か月 | 銀行交渉・任意売却の準備開始・専門家への相談 |
| 督促状・期限の利益喪失通知が届いた | 任意売却の手続き開始。時間が選択肢を左右します |
| 競売開始決定通知が届いた | 任意売却への切り替えは可能。ただし早急な対応が必要 |
4. 「自営業だと任意売却できない」は誤解
「自営業者は信用がないから任意売却できないのでは」というご不安を持って相談に来られる方が少なくありません。しかし、これは誤解です。
💡 任意売却の可否は「雇用形態」では決まらない
- 判断基準は「住宅ローンの抵当権と滞納の有無」
- 任意売却とは、住宅ローンの残債が自宅の売却価格を上回る状況で、金融機関(抵当権者)の合意を得て自宅を売却する方法です。この手続きにおいて、売主の職業・雇用形態は問いません。自営業者・個人事業主・フリーランスでも、住宅ローンの抵当権がついており一定期間の滞納がある状態であれば、任意売却の手続きを進めることができます。
任意売却後の残債返済も同様
任意売却後に残った残債(売却代金で払いきれなかったローンの残り)の分割返済額は、債権者との協議で決まります。給与所得者であっても自営業者であっても、その時点での生活・収入実態に応じた金額で設定されます。月々1万円程度のケースも実務上あります。
エイミックスには、自営業者・個人事業主・法人代表の方からのご相談が多数あります。収入の不安定さや事業融資との絡みなど、状況ごとに異なる論点を踏まえて対応してきた経験があります。
5. よくある質問(FAQ)
- Q. 自営業で収入が不安定です。任意売却後の残債分割返済を認めてもらえますか?
- はい、認められるケースがあります。残債の分割返済額は、その時点での生活・収入実態をもとに債権者との協議で決まります。自営業・無収入・年金収入など、状況に応じた金額での設定が認められることが多く、月々1万円程度のケースも実務上あります。
- Q. 事業融資と住宅ローンの両方が滞納しています。どちらを先に相談すればいいですか?
- まず、住宅ローンの状況(滞納月数・競売の進行状況)を確認することをお勧めします。競売が進行していれば、自宅を守るための対応を優先する必要があります。事業融資の整理は、住宅ローン問題と並行して弁護士・司法書士と相談する形が多いです。エイミックスでは必要に応じて専門家のご紹介も可能です。
- Q. 確定申告書の収入は高いのに実態は苦しい。銀行に信じてもらえますか?
- 直近の月次売上・通帳の入出金履歴・売掛金の回収状況など、実態を示す補足資料を準備して相談することが有効です。確定申告書だけでは伝わらない実態を丁寧に説明することで、対応してもらえるケースがあります。銀行への相談をどう進めるかについては、エイミックスにご相談いただくことも可能です。
- Q. フリーランスですが、任意売却後に賃貸住宅を借りられますか?
- 信用情報への影響(いわゆるブラックリスト)はありますが、賃貸借契約の審査は信用情報機関を参照しないケースも多く、収入の証明と保証会社の選択によって審査が通るケースがあります。任意売却後の生活再建に関するご不安も、合わせてご相談ください。
6. まとめ
✅ この記事のポイント
- ● 自営業者の住宅ローン問題は、給与所得者より静かに進行することが多い。
- ● 確定申告書と実態収入のタイムラグ・雇用保険がないこと・事業融資との二重苦が固有の落とし穴。
- ● 任意売却は職業・雇用形態を問わない。自営業者でも手続きは変わらない。
- ● 「まだ払えている」段階に動き始めることが、最も多くの選択肢を残す唯一の方法。
- ● 事業融資も絡む複合的な問題は、不動産と法律の両面からの連携対応が必要。
自営業・個人事業主の住宅ローン問題、まずご相談ください
確定申告書だけではわからない実態・事業融資との絡み・任意売却後の生活再建まで、22年の専門実績でサポートします。

この記事の監修・相談回答
細貝 和弘(ほそがい かずひろ)
宅地建物取引士 / 公認不動産コンサルティングマスター / 2級FP技能士
自営業・個人事業主の方からのご相談は、給与所得者の方とは違う切り口で整理する必要があります。「確定申告書には出ない実態の苦しさ」「事業資金と住宅ローンの優先順位」──こうした複雑な状況も、一緒に整理するところからお手伝いします。まずは現状をお聞かせください。




























