任意売却後の残債務はどうなるの?
<大阪府 松原様(仮名)>
住宅ローンの返済がもう出来ない状態で、今の自宅をもう手放すことも考えています。ただ、すでに毎月の住宅ローン返済分が全く足りない状態で、売却後に残る残債は払えそうにもありません。
任意売却という方法で解決できるというのはわかったのですが、任意売却をしたあとの残った債務はどう返済するのでしょう?たとえ少額でも一括返済など出来ないのは当然ですし、もう分割でも毎月何万円も用意できません。
今はそれが怖くて任意売却をお願いするのも怖くなっています。
【松原様の現状況】
- ■住宅ローン残債 2,500万円
- ■住宅ローン残債 2,500万円
- ■査定価格 1,500万円
- ■差額 1,000万円
【現在の毎月の返済】
- ■住宅ローン返済/月 110,000円
- ■ボーナス払い/月 200,000円
→任意売却後の毎月の支払は??
A. 答えは、「出来る範囲での毎月返済のお約束」です。
任意売却後は、払える範囲で、少しずつ無理せず残債務を返済していくことになります。
皆さん「えっ?!」と言う反応がほとんどです。
但し、いくらでも良いという訳ではありません。任意売却したときの債務者(あなた)の収入状況にもよりますが、債権者との交渉で月々1万円程度の返済で話がつくケースが多くなっています。
さて、これはいったいどういう仕組みなのでしょうか?
【任意売却後の毎月の返済】
- ■新居賃料/月 70,000円
- ■残債返済/月 10,000円
- ■ボーナス払い/月 0円
(※「任意売却」とはについての詳しいお話はこちら→「任意売却とは?専門家が分かりやすく解説」)
この記事を読んでわかること
監修
細貝 和弘(ほそがい かずひろ)
宅地建物取引士
公認不動産コンサルティングマスター
2級フィナンシャルプランニング技能士
賃貸不動産経営管理士
相続診断士
大手不動産仲介会社の法人営業部の責任者として任意売却部門を立ち上げ。銀行や信用保証会社、債権回収会社および破産管財人弁護士のサポート、そして住宅ローンの返済に困窮した方々のお悩み300件以上をコンサルティングしてきた、いわば任意売却の専門家。
1.その後の返済方法は?
え!?83年払い!
それでは、具体的に説明します。
例としてご相談者の松原様の状況でご説明します。まず、住宅ローン残債務が2,500万円です。任意売却が市場価格で出来たとして、債権者に1,500万円を返済すると、住宅ローンの無担保債権額が1,000万円ということになりますね?
そして、この残った1,000万円をお話したように月々1万円での返済ということになると…1,000ヶ月払い!?
なにそれ?!いったい金利はどうなるの?という話になりますが、月々の返済は全て元金に充当されいきます。
但し、金利についてはどんどん膨らんでいくのですが、全額返済できたとしたら金利については減免してくれるのです。とは言うものの「1,000ヶ月」って…となりますよね。何年?計算すると1000÷12で83.3年になります。これはもう亡くなっていますよね。そうなんです。
死亡時に相続しなければそれで債務は消えます。
こういうからくりです。
但し、これは公庫などの公的機関からお金を借入している方の場合の話です。銀行等のプロパーの融資についてはまた別の方法の処理になります。
公的融資以外の場合
では、公的融資以外の俗に言う銀行のプロパーの貸金の場合をお話ししましょう。
担保の自宅を売却して残った債権の事は、業界では「ポンカス債権」(俗語ですが)などと呼ばれています。
金融機関は、不良債権となった担保不動産を換価し、損益を確定させてそのポンカス債権をサービサー(債権回収会社)に譲渡します。
ポンカス債権を購入するサービサーは、額面通りの債権額で購入するのではなく、額面の僅か数パーセントの価格で買入れ、債権者となるのです。
例えばですが、ポンカス債権3,000万円をサービサーへ譲渡されて債権者となった場合、購入した金額は、2%で買ったと考えて60万円、債務者から月々1万円での返済を受けたとして、60回ですべて満額の回収ができるわけです。
したがって、サービサーとの交渉次第では、格安で一括返済の交渉ができる場合もあります。その結果、住宅ローンを数十分の一程度に圧縮できる可能性もあるのです。
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2.債権譲渡を繰り返すうちに一部債務免除になるケースもある
少しずつ返済している間に債権譲渡が繰り返されて、返済する相手が変わっていくうちに、「いくらまとめてお支払いただければ債務免除しますよ」という提案を債権者側から受ける場合があります。債権譲渡を繰り返すうちに債権額が圧縮されているのです。
任意売却をした後1,000万円近く残債がありましたが、返済を数年間行っている間に債権譲渡が繰り返されて最後は一括金50万円で債務免除の話がついたケースもあります。任意売却後の残債に関しては、必ずこうという決まりがあるわけではなくケースバイケースとなります。
3.残債を分割払いにしていてもし払えなかったら?
では、任意売却後のローンの残債を分割払いにしていて、もしそれを払えなかったらどうなるのでしょうか?
このような不安もありますよね。基本的には、お話したように、残ったローンの残債は分割払いの約束を債権者として少しずつでも返済していくことになりますが、この残債の分割払いの支払いを滞納すると、この分に関しても、また「期限の利益を喪失」することになり、一括請求されることになります。
売る家も無い任意売却後の滞納
しかし、今回は一括請求されても任意売却で売る家もないため債務者としては何もできないのが実情です。債権者はどうするかというと、分割払いが払えなかったのに一括請求をかけても返済してもらえるとは思っていませんが、債券者によっていろいろな手段で任意売却後のローンの残債を回収しようとしてきます。
その際の債権者の代表的な手段としては
- ①連帯保証人がいれば連帯保証人から取り立てる
- ②別の債権者に債権譲渡する
- ③債務者の給与を差押えする
などが考えられます。
代表的な手段を全て行われた相談者の例
実際に弊社にご相談頂いて任意売却で家を売却したご相談者様で①~③のフルコースになってしまった方がいらっしゃいました。
その方は離婚していたのですが住宅ローンを借りた時に元妻が連帯保証人になっていたので任意売却後の住宅ローンの残債についても元妻がそのまま連帯保証人になっていたのです。
しばらくの間は任意売却後のローンの残債を3万円ずつ払っていたのですがある時失業してしまいその3万円も払えなくなってしまいました。
そして①のように連帯保証人の元妻にも債権者からの取り立ての督促がいったのです。しかし元妻側も生活に余裕が無かったため債権者は元妻から返済してもらうことはできませんでした。
そしてしばらくは何の連絡も無かったそうです。払わなくても何も言われないので内心ラッキーと思っていると②のように別の債権回収会社(サービサー)から『債権譲渡を受けたので今後は当社に返済してください』という通知が来たそうです。
しかし次の仕事が見つからなかったため払えないと伝えてその後の取り立ての督促も無視していたとのことでした。
そしてしばらくの時間がたち、次の仕事も決まって生活も少し安定してきたなと思っていた矢先に今度は職場に②の債権回収会社(サービサー)から給与差押えの通知がいってしまいました。
結局職場に居づらくなってほどなく仕事を辞めてしまったとのことです。仕事を辞めたので給与差押えで引かれることはなくなりましたがまた収入が絶たれてしまいました。
その後しばらくは会社員などの給与の仕事に就くとまた給与差押えをされる可能性があるので業務委託などの源泉徴収されないフリーの仕事をしていましたが、会社員としてバリバリ働きたいという希望もあり、再度ご相談頂いて弁護士さんにも相談した上で自己破産処理することになりました。
自己破産して免責決定を受けたことで任意売却後のローンの残債は消滅しますので、その後の給与差押えなどの危険はまったくなくなり、いまでは会社員として正社員でいきいきとお仕事をされています。
任意売却専門業社としてその後のことまでしっかりケアします。
私たちは任意売却後にもご相談者様と連絡を取り合ったりしているので、任意売却後の残債のことまでも細かくご相談に乗れます。
任意売却専門の不動産会社には任意売却後のことまで追跡していないところも多々ありますので、そういうところで任意売却を依頼すると任意売却後にどうなっていくのかがその担当者ですら分かっていないためご相談者様が不安に感じられることが多いようです。
任意売却は任意売却後の生活が今よりも立て直せてなんぼの生活再生のための手段です。
任意売却後のアフターフォローもご希望であればお世話していますのでお困りのときにはぜひ経験豊富な当社にご相談ください。